連載 ひろがる災害医療と看護 身につけるべき知識とスキル・12
災害時の精神疾患患者への対応
山本 賢司
1
1東海大学医学部専門診療学系精神科学
pp.992-998
発行日 2014年10月25日
Published Date 2014/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663200021
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はじめに
代表的な精神疾患である統合失調症の生涯有病率は約1%,うつ病は約5〜6%といわれている。したがって,大規模災害などで数多くの被災者が発生した場合,そのなかにはもともと精神疾患を有している人が一定数存在している可能性が高い。実際,筆者は阪神淡路大震災,東日本大震災の被災地支援に精神科医として伺ったが,救急対応を迫られた症例や精神保健相談で対応した症例のなかには,発災前から罹患していた統合失調症,双極性障害,アルコール関連問題の症例が少なからず含まれていた。
被災者の精神医学的な問題として,急性ストレス性障害や心的外傷後ストレス障害が取り上げられる機会が多い。もちろん,これらの病態は精神疾患をもともと有している人にも起こり得るし,「精神疾患の既往」は女性であること,経済状態が困難であること,被災した土地に移住してきたことなどと同じく,心的外傷後ストレス障害(Post-Traumatic Stress Disorder;以下PTSD)発症の危険因子でもある1)。
しかし,大規模災害のときには既存の精神疾患の再燃,増悪を防ぐことや,避難所などで不適応を起こさないための対応も重要となってくる。本稿では,災害時の精神疾患患者の状態,対応について概説し,看護師として支援を行ううえでの注意点について言及したい。
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