第2特集 看護学生論文─入選エッセイ・論文の発表
論文部門
その人らしく生きるための看護―肺癌脳転移の終末期患者の口腔ケアを通して
木場 奈美
1
1奈良県立奈良病院附属看護専門学校
pp.737-741
発行日 2014年8月25日
Published Date 2014/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663102787
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はじめに
終末期がん患者には身体的・心理的・社会的にさまざまな苦痛に加え霊的な苦痛が混在しており,それらを包括した全人的ケアの重要性が強調されてきた。なかでも患者が「人間らしく」「その人らしく」生きることを支える霊的な苦痛に対するケアは重要である。
今回私は肺がん脳転移による終末期である60歳代男性を受け持った。患者は身体的な苦痛を訴えていなかったが,突然の進行癌発見から種々の治療を受けて現在に至る経過には将来を断たれた心理的苦悩,家族を残して先立つ不安が生じていると推察できた。そして患者に残された時間を有意義に,また苦痛を少しでも少なく過ごすことが家族の願いであった。
そこで私は,患者が営業職という立場から身だしなみを整え,歯を大切にしてきたという生活史を尊重し,患者とその家族が日常生活のなかで少しでも喜びを感じることができればと願って,看護を実践した。口腔ケア場面の看護実践を振り返り,終末期にある患者の全人的ケアは対象の自尊心を尊重し,患者の全身状態の観察と状況に応じた看護実践を遂行するプロセスに,患者および家族の喜びや希望を引き出すことができるよう関わることであると明らかになったので報告する。
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