連載 ひろがる災害医療と看護 身につけるべき知識とスキル・7
災害現場で必要な災害医療と看護
井上 潤一
1
,
川谷 陽子
2
1山梨県立中央病院救命救急センター
2愛知医科大学病院高度救命救急センター救急外来
pp.338-347
発行日 2014年4月25日
Published Date 2014/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663102683
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災害現場で医師ができること
井上潤一
山梨県立中央病院救命救急センター部長
はじめに
あなたは病院で勤務中です。昨夜からの大雨により隣町で土砂崩れが発生し複数の住宅が押し流されるという災害が発生しました。消防からは,何人かが生き埋めになっており,至急現場に来て治療にあたってほしいという要請がありました。あなたはどうしますか?
(A)危ないので行かない。
(B)とりあえず行ってみるが,知識も経験もないので現場のなかには入らない。
(C)とりあえず行ってみる。要請があれば土砂崩れ現場のなかに医師とともにも入る。
さて,あなたはどれを選んだでしょう?正解は……。
災害対応の大原則である安全の確保(自分の身は自分で守る)を考えれば,土砂崩れの2次災害の危険が高い状況下では(A)という選択はあり得るでしょう。一方,要請されたということは最低限の安全は確保されていると判断し現場近くには行く,でも経験も知識もないのでなかには入らず救出されてきた負傷者の対応をする(B)という選択は,一般の医療者にとって一番妥当な判断といえるでしょう。しかし目の前に助けを待っている人がいる以上,少しでも近づいてできることをしたい(C)という選択も医療者としては当然かもしれません。では(C)を可能にするにはどのような知識や準備が必要なのか。本稿ではこれらについて述べてみたいと思います。
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