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はじめに
大阪大学では,海外の多くの大学や教育機関と学術交流協定を結んでおり,協定校と共同研究や,研究者・学生の国際交流を盛んに行っている。協定校の1つであるフィンランド・オウル大学とは,2008年より「フィンランド・オウル大学看護学科と大阪大学医学部保健学科看護学専攻との共同研究セミナー」を開催してきた1)。
フィンランドは,人口540万人の北欧に位置する国である。戦後,日本と同様に急速な経済発展を遂げた社会経済的背景から,日本と近しい国といわれている。平均寿命は男性76歳,女性83歳である。2030年のフィンランドの高齢化率は23.7%になると予想され,日本の高齢化の推移(2030年予想26.0%)と類似している2)。
国民は収入の50~60%を税金として納めており,充実した医療・福祉や無料の教育が受けられる。フィンランド政府は,「すべての市民は,経済的事情にかかわらず平等に教育を受ける権利をもつ(All citizens have equal opportunities for education, not depend on financial status)」との指針を掲げ,フィンランドに納税していない海外からの留学生に対しても無料で教育が提供されている。医療においては,周辺の医療事情の悪い国からの緊急移送先となっており,日本と同様に医療水準が高い。
フィンランドの中部に位置する国立オウル大学は,1959年に設立された国内第二の規模をもつ総合大学である。看護学の大学院をもち,大阪大学と同じくJBI(Joanna Briggs Institute:オーストラリア・アデレード大学にあるEBNを推進する非営利国際研究機関,世界中で実施された研究の成果を看護実践に活かすためにまとめられたデータベースをもつ)のメンバーでもある。附属病院と協働し,看護教育・研究に力を入れている。
今回,学生としてフィンランド・オウル大学を訪問し,2012年9月17日から5日間開催されたセミナーに参加した。医療・福祉制度,教育,地域保健の担うべき役割についての講義を受講したうえで,オウル大学病院など医療施設を見学した。本稿では,オウル大学病院の現任教育について紹介し,日本における現任教育の課題について考える。
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