特集 コミュニケーション力を育む─実習前に教員としてできること
当事者の話をよくよく聞く―被災地支援と看護相談での学生の学び
山田 雅子
1
1聖路加看護大学看護実践開発研究センター
pp.856-859
発行日 2012年10月25日
Published Date 2012/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663102211
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
当事者から「よくよく話を聞く」技術の重要性
筆者は在宅ケアに関わって久しいが,訪問看護を行うにも,近年注目されてきた退院支援に関わっていくにも,コミュニケーション技術が看護師のキャリア開発の大きな壁になっていると感じることが多い。訪問看護を志す看護師あるいは退院調整看護師専任として任命される看護師は,少なくとも3年間以上の臨床看護の経験を有するベテランの看護師が多いわけだが,新しいキャリアを開発していくに当たり,コミュニケーション技術に関連した課題にあらためて直面する例が多いと感じている。
ベテラン看護師たちが直面するコミュニケーション技術の壁とは,特に,当事者から「よくよく話を聞く」といった視点でのコミュニケーション技術である。患者が高齢者であれば家族から話を聞き,子どもであれば母親から話を聞き,治療方針は主治医に確認するとしたコミュニケーション手段を日常業務のなかで身につけてしまっている看護師が多いのではないだろか。患者中心の看護とよくいわれているが,教室内での事例検討や模擬カンファレンスなどを通して見えてくる医療現場の実態は,必ずしも患者本人の意向を尊重していない。患者本人の意向を聞かないまま看護を展開しようとしているから,倫理的課題を抱えた事例の検討といっても,倫理的ジレンマとして対立関係を分析するまでにも至らないところで看護師だけが悩んでいる,といった報告が後を絶たない状況である。
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.