特集 学問としての在宅看護論の確立へ
「地域社会に求められる看護師」の育成を目指した教育・研究・実践―地域看護学,在宅看護論から,エンド・オブ・ライフケア看護学に至る経験より
長江 弘子
1
1千葉大学大学院看護学研究科エンド・オブ・ライフケア看護学
pp.766-772
発行日 2012年9月25日
Published Date 2012/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663102187
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訪問看護の現場と大学で協働する教育実践のはじまり
私が地域看護学の教員となったのは約15年前,1998(平成10)年4月のことである。当時,聖路加看護大学では統合カリキュラムへの移行期であった。看護師・保健師統合カリキュラムにおいて地域看護学(14単位)が置かれ,「市町村および保健所を中心とした保健予防活動に焦点を置いた公衆衛生看護学と在宅療養者に焦点を置いた在宅看護論を統合的に学ぶ内容とする」とされた時期である。
新人教員であった自分にはそのような社会的背景はわからぬまま,目前にある講義と実習カリキュラムをこなしていた。しかし,当時の地域看護学教授が川越博美氏であったことから,幸運にも在宅看護に関する先駆的研究に携わることが多かった。その一つに,1997(平成9)年度厚生省老人保健事業推進費等補助金を受けて実施した訪問看護事業の経営・質の確保向上に関する研究(訪問看護ステーション実習のマニュアル作成事業)があり,(社)全国訪問看護事業協会のもとで実施し,その結果を『訪問看護ステーション臨地実習マニュアル』1)という書籍にした。すでに絶版となっているが,この本は,今読んでも基本的な考え方を示しており,活用可能であると感じている。なぜなら当時と変わらず現在でも訪問看護ステーションは学生実習受け入れに疲弊し,スタッフ教育をする教育環境が整わず人材の確保と質の向上には課題を抱えているからである2)。
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