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はじめに
在宅医療が推進されるなかで,看護職の役割は病院から地域へと拡大してきている。近年の医療制度改革においても,病院から在宅への円滑な移行と医療の継続を重視しており,看護職には広く,患者・家族の生活の場に即した看護の提供方法を柔軟に検討する力が求められている1)。
富山福祉短期大学は,2008(平成20)年4月に地域を理解し,保健・医療・福祉従事者と良好な関係を構築できる看護実践者の育成を目指し開学した。本学の実習の特徴は,県内にあるさまざまな規模・種類の病院や施設,診療所,保健センター,訪問看護ステーション,富山型デイサービスなど保健・医療・福祉の多様な場での実習である。さまざまな実習の場を体験することにより将来の活躍の場を広げてほしいという願いがある。これは,今までの看護教育での実習が大きな病院を中心として進められており,病院に働く看護師を想定した教育になっていたのではないかという反省のもとに構築したものである。
本学の実習は全体を通して,人々が暮らす地域に目を向けるように意図している。例えば,在宅看護学以外のすべての実習においてもオリエンテーション学習シートで,それぞれの地域の特徴,施設の特徴とともに地域での役割を記入する欄を設け,学生に地域を意識づけている。また,小児看護学では,保育所のほかに地域のクリニックでの実習を取り入れ,母性看護学では,助産所,保健センターへも出向いている。精神看護学では社会復帰施設での実習,成人看護学では地域連携室での実習も体験している。高齢者看護学では,介護老人保健施設,介護老人福祉施設が提供している入所,通所のサービスを体験している。そして,これらのさまざまな場における実習を通して学生は,それぞれの場における患者・利用者・看護職・他職種と接する機会をもつこととなる。病院だけが看護職を求めているのではなく,人が生きている場,暮らしている場すべてにおいて看護の目と手が求められていることを意識づけたいと考えている。
しかし,このように多くの場を体験するとき,その体験を結びつけ,統合していくための援助が重要である。上記の背景を踏まえたうえで本稿では,本学における在宅看護学の授業・実習の概要を紹介し,学生が実習を通して学んだことについて述べる。
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