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看護大学における疫学教育の意義
鷲尾 昌一
1
,
矢野 正子
1
1聖マリア学院大学看護学部公衆衛生学
pp.710-712
発行日 2012年8月25日
Published Date 2012/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663102170
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疫学と看護
疫学は人間集団を対象とする学問であり,疾病の罹患をはじめ健康に関する事象の頻度や分布を調べ,その要因を明らかにし,疾病発生要因の追究や疾病自然史の解明,疾病対策の企画・評価など公衆衛生の向上やEBMに必要な科学的根拠を与えるなど保健・医療の発展に役立ってきた。
看護の領域にはじめて疫学をもち込んだのはフローレンス・ナイチンゲールである。彼女は病院のケア環境を整えることで飛躍的に入院患者の死亡率を減少させたが,看護介入の効果を科学的に示すために疫学・保健統計を用いている。彼女は英国陸軍の衛生状態改善のために働いたが,病院の外科手術の評価を行うのに,死亡率を単純に比較するのではなく,年齢,性別,職業,手術の原因となった事故や疾病,手術の種類の他,術後の合併症(手術に直接関係ある合併症とない合併症)にも注目し,術後の熱性疾患(感染症)の過多が死亡率に大きな影響を与えていることを指摘し,衛生状況を改善することにより死亡率を減少させた。注目すべきことはロベルト・コッホが純粋培養の技術を確立し,細菌が感染症の原因であることを証明するよりも前にフローレンス・ナイチンゲールが院内感染制御の方法を確立したことである。
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