連載 実習の経験知 育ちの支援で師は育つ・10
カンファレンスの技
新納 美美
1
1北海道大学大学院理学院自然史科学専攻
pp.524-528
発行日 2012年6月25日
Published Date 2012/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663102110
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同じ被写体なのに
数年前,実習スケジュールに忙殺される最中,駐車場でふと見上げると,抜けるような青空が突然モノクロ写真のように見えました。そのときほど,自分自身が過去の先端を歩いていることを実感したことはありません。その強い感覚が“いま”を切り取るカメラとの出逢いになりました。
写真を始めて最も興味深いと感じたのは,同じ被写体でも撮る人が違えばまったく違った印象の“画”になること。撮影会の後,参加者同士で作品を見比べたときには,その面白さに時を忘れます。注目する被写体の違いだけでなく,同じ被写体でも捉える角度や距離感に違いがあり,それぞれに二つとない世界を描いているのですから。そして,写真を間に挟むと話が盛り上がり,互いの感性の違いも心地よい距離で話せます。しだいに,理想の“画づくり”めざして技術的な学び合いも活発に……。グループの動きや対話に関心がある私は,ふっと別次元のまなざしでグループを眺めてしまいます。「実習もこうだったら苦労ないのになぁ……」。実習カンファレンスも,写真の会のように,自然と“熱”を帯びた空気が満ちてきてくれたら良いのですが,なかなか思う通りにはなってくれないのでした。
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