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最終日の風景
実習最終日,学生たちは嬉しいような緊張したような,テンション高めの表情でフィールドにやってきます。ロッカー越しに聞こえてくる学生たちの声に耳をそばだてると,まだ一日あることなど忘れたかのように朝から打ち上げの相談をする声や,次の実習の準備などについて話す声が錯綜しています。元気だなと思いながら身支度をしていると,時折「カンファレンスの準備した?」などと周りの様子を伺う声も飛び込んできます。今日の実習のことを考えている子の存在に胸をなでおろしたのもつかの間,「あたし,もうレポート書いちゃったから」と得意気な声が……。終了後にまとめるはずのレポートを,実習中に書いてしまうという方法があったということを,私は教員になってから知りました。学生の雑談には,思いもよらなかった“実習こなし術”が含まれていることがあり,叱る以前に感心してしまうのでした。それにしても,馴染み過ぎたのか,フェイドアウトの技*1がききすぎたのか,近くで聴いている私の存在はまったく眼中になさそうです。
学生は半ば解放感に浸っているかのように見えますが,教員にとって最終日には独特の緊張感があるものです。もう後がないので,なんとか,全員が丁度よい落としどころにおさまる感じの終わり方になってほしいものだと思うのが人情。もちろん“全員”というのは学生だけではありません。指導者や対象者も入っていますし,教員である私自身にも“終わったな”と穏やかに思える後味の良さがほしいのです。そんな終わり方のために必要なことをここに書いてみようかなと思い振り返ってみましたが,残念ながら特別なことは出てきませんでした。あえて言えば“平素と変わらず(最後まで気を抜かず)”“視野を広く”“気遣いを忘れず”くらいでしょうか。しかし,そうと言えども,やはり,最終日にしなくてはならないことがいくつかあります。もっとも大きなプログラムは,最終カンファレンス(最後の節目となるカンファレンス)でしょう。
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