連載 実習の経験知 育ちの支援で師は育つ・7
実習道場―“心技体”の掛け軸を携えて
新納 美美
1
1東京大学大学院医学系研究科
pp.241-245
発行日 2012年3月25日
Published Date 2012/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663102034
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よりきり,うっちゃり,ねこだまし
まだ子どもの時分から,私は同じ年頃の子よりもテレビを見ないほうでした。おかげでスポーツや芸能にはめっぽう疎く,野球やアイドルの話も苦手……。それでも,一度好んだ対象には割と律儀で“○○が見たいからテレビを見る”なんてこともありました。そんな理由で,旭道山関が土俵に上がっていた頃は相撲中継を観戦することもしばしば。おかげで,相撲の知識も少しはもてました。
当時,舞の海関の“ねこだまし”が話題になりましたが,あのシーンを見たときには本当に驚きました。相手の目前で両手をパンと叩き意表を突く動作がちゃんとした技だというのですから「日本人もなかなかイケてるよなぁ」と感心しきり。土俵際で大逆転の“うっちゃり”も好きな決まり手の一つでした。このように面白い技に大喜びだった私もしだいに趣向が変わり,四つに組みじわじわと攻める寄り切り相撲が好きになりました。素朴な力試合は見る者に素直な感動を与えてくれます。「稽古積んだんだなぁ」と圧倒的な強さに頭が下がる……そんな思いがしてなりません。
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