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はじめに
1996(平成8)年に指定規則および看護師等養成所の運営に関する指導要領の改正があり,「施設内の看護と地域の看護を視野に入れた看護サービスを提供できる能力を有する看護職員を育成するために統合カリキュラム」が提示された。これからの少子・超高齢社会を担う看護職者の養成を目指し,画期的な取り組みに驚きを覚えると同時に,そのような教育が本来の看護基礎教育である,という思いを強くしたことを思い出す。
そして,筆者の所属する養成所(以下,本校)も,統合カリキュラム教育を導入するための検討を行った。実現までには紆余曲折があったが,2005(平成17)年から本格的準備を行い,2007(平成19)年度入学生から統合カリキュラム教育を実施することになった。それだけに筆者の統合カリキュラム教育への思い入れは強いものがある。
しかし,本校が統合カリキュラム教育の完成年度を迎える前の2009(平成21)年には指定規則等の改正があり,地域看護学から在宅看護論が外され,旧来の公衆衛生看護学にシフトしていくような感覚をもった。そして,2011(平成23)年の指定規則の改正で,名実ともに公衆衛生看護学に戻った。
厚生労働省が示した「施設内の看護と地域の看護を視野に入れた看護サービスを提供できる能力を有する看護職員の養成」は,間違いなくこれからの看護基礎教育に期待されるものであると確信しつつも,今回の一連のカリキュラム改正における議論やその結果は,統合カリキュラム教育実施校にとって「掛けた梯子を外された」感を残すと同時に,今後,施設内の看護と地域の看護を視野に入れた看護サービスを担う看護職員をどう養成すべきか,という新たな課題をも抱えることになった。
筆者は約5年間統合カリキュラム教育に携わってきたが,地域看護学を統合した看護学教育は,看護基礎教育のあるべき姿であるという確信を深めると同時に,公衆衛生看護学をその学問背景とする保健師教育からみると,その到達の不十分さを認めざるを得ない実情である。
そこで,今回は,看護基礎教育からみた統合カリキュラム教育の成果を確認するとともに,今後ますます重要になる「施設内の看護と地域の看護を視野に入れた看護サービスを担う看護職員」の養成について,私見を述べたいと思う。
なお,本稿での用語の定義は,以下のようにする。
看護基礎教育:看護師・保健師・助産師に共通する基礎となる教育
看護師基礎教育:看護師の基礎となる教育
公衆衛生看護:地域や地域住民全体を対象とする行政保健に加えて,学校保健,産業保健といった特定の集団,組織を対象とする看護活動
地域看護:公衆衛生看護に在宅療養者の看護活動を加えて,広く地域を基盤におく看護活動(図1)
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