扉
脳神経外科医の心技体
永廣 信治
1
1徳島大学脳神経外科
pp.197-198
発行日 2017年3月10日
Published Date 2017/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436203478
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大学の脳神経外科講座教授の退官を控え,「脳神経外科医はどうあるべきか」,「医学生はどうあるべきか」など,自分の経験をメッセージとして伝える機会が増えている.これは去りゆく者に課せられた義務と認識し,自らを振り返るよい機会となっている.私事で恐縮だが,私の人生には脳神経外科医と柔道家としての2つの顔があると自覚している.したがって,話はよく脳神経外科から脱線して柔道の話になってしまう.ここでは脳神経外科医における心技体と得意技(subspecialty)選択の意義について述べてみたい.
2004年に徳島で開催した脳神経外科コングレスの主題は,「脳神経外科医の心技体」とし,柔道家の古賀稔彦氏に文化講演を依頼した.古賀氏は心技体の中で特に心の重要性を述べ,「なぜ柔道をするのか」について考え,強い覚悟と志を持たねば試合には勝てない,試合では余分な緊張や弱気があれば自分の実力を100%発揮できないが,強い精神力と自信,無我の境地で臨むと120%以上の実力を出せる,などと述べた.心と志,精神力は,医師特に脳神経外科医として生き抜くのにも重要な要因である.手術前に戦略を練り,成功に向けた万全の準備を行う.手術前に必ず行うルーチンを決めておくのも,手術中に「平静の心」を持つのに大切だと思う.野球のイチロー氏もラグビーの五郎丸氏もそれぞれルーチンを持ち,しっかりと精神統一をしている.私も手術の朝は必ず握り飯とみそ汁を食べることや,手洗い前に精神統一をするなど,つまらないことかもしれないが,いくつかのルーチンを持っている.
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