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はじめに
2009年の看護基礎教育のカリキュラム改正により,看護師には看護実践能力の強化および統合能力が求められており,統合分野として「災害直後から支援できる看護の基礎的知識について理解すること」という留意点が加わった1─2)。本学でも,2009年度生より「チーム医療と災害看護」が必修科目となり,災害看護についての教育を始めることとなった。
災害は多種多様であり,ひとつとして同じ災害はなく,災害サイクルのフェーズに即した対応がなされるべきとされている。災害サイクルの静穏期(silent phase)は,準備の期間として,計画・訓練・備蓄を行うことが必要であり,日常から準備(preparedness)することにより,災害の発生を防ぐことはできなくても減災(mitigation)することが可能であるといわれている3)。
都道府県看護協会は災害支援ナースの養成を開始したが,まだまだ少数で,災害時にはマンパワーが不足すると考えられる。そのようななか,看護学についての基礎知識をもつ看護学生であれば,果たすことができる役割は多くあると考える。しかし,看護学生は,生活体験に乏しいだけでなく,自分が実際に救助や救護に出向くことや,その場での行動のイメージがつきにくい現状がある。
そこで,災害看護を念頭に置いた日常からの準備の一方法として,設定された被害想定に基づいて手軽に行える災害図上訓練(Disaster Imagination Game:以下,DIG)を行っておくことが,災害時の支援に有効であると考える。DIGは,災害発生時に自分でできることを自分自身で行う「自助」,および災害時に地域で協力して自分たちが活動できることや必要なケアを考えた行動をとれる「共助」をイメージしていくためにも有効と考える。
しかし,DIGのほとんどは病院や行政などで行われており,看護学生を対象としているものは少ない。今回は,行政の協力を得たうえで看護学生によるDIGを企画・実行し,それをもとにして災害看護の教育に活用するためのIT教材も開発したので報告する。
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