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途切れることのない成長・発達
今では中年が板についてしまった私も,20年ほど前にはまだ社会人1年生でした。当時は「近頃の新卒看護師は,リアリティショックですぐに離職する」などと言われておりました。新卒看護師の離職問題は今も健在ですが,新人教育の現場をのぞくと最近は少し事情が違ってきていると感じます。ここ数年でよく耳にするのは,「新卒に教育するのが大変。最近の子は叱るとメンタル*1になる」など若い世代の打たれ弱さを嘆く声です。「悩みを抱えたとき相談してくれるのはいいんだけど,適切な距離が取れなくて,休日でも夜間でもメールや電話がきて困ってしまう」「自分でやろうとしないで指示を待っていたり,仕事を頼むと“教えてもらってないからできません”と言ったりする」という話を聴くこともしばしばで,対応に苦慮する現場の様子が伺えます。最近は,入職して短期間で新人が離職すると,管理職が叱られるところも少なくないのだとか……。教育担当の中堅職員は「辞めたりメンタルになったりしないよう,丁寧に指導するように」と管理職からもプレッシャーをかけられることがあるのだそうです。
このように,若い世代の変化に戸惑いを感じているのは,現場だけではありません。大学教育に携わっていると,自分が学生だった頃と比べて時代が変わったのかなと感じる場面があるものです。教員を保護者のように頼る学生や,自分の判断で行動するよう求めると不安定になる学生が少なからず存在しており,自分が教育されたときの感覚で接しても通用しないと思うこともしばしばです。そして,教員間でいつも話題になるのは「コミュニケーションがとれない学生が増えている」ということです。質問できない,意見を言えない,対象者と話すことができない等,コミュニケーションの話になると「ない」ことづくし……多くの場合,最後には「自分で学ぶ力がない」という結論に落ち着きます。そして,学生のメンタルヘルス上の問題に関する苦労話も,水面下でよく語られています。
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