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はじめに
百日咳は小児の疾患として捉えられがちだが,現行のワクチンでは終生免疫が得られず,効果は10年程度しか持続しない1)。そのため全世界的に成人での流行例がみられ,欧米では,ジフテリア・破傷風二種混合ワクチンから,百日咳を加えた三種混合ワクチンへの移行が勧奨されている。日本では1950年より予防接種法によるワクチンに定められ接種が開始され,世界でもっとも罹患率の低い国の1つとなっている。しかし脳症などの重篤な副反応が問題となり,接種率は低下し死亡者数が増加する。1981年より改良された百日咳ワクチンを含む三種混合ワクチンを導入,2008年より2期の三種混合ワクチンの接種試験が開始されている。1999年,百日咳は感染症法5類感染症に分類され,全国約3000の小児科から最寄りの保健所に患者数が定点報告されている(図1)。20歳以上の報告割合は年々増加し,2010年には50%を越えているが,小児科からの報告であるため,総患者数はさらに多いと考えられる。
看護学生は,病院,保健所,老人保健施設,助産所といった学内外で実習を行い,幅広い年代層と免疫不全者や免疫のない乳児などと接触するため,感染症への対応は重要な課題の1つである。
そのため当学科では,2004年より感染対策委員会を設置し,看護学専攻には3名の教員(医師1名,看護師2名)が配置されている。感染対策委員会では,学科事務部と連携し,初めて病棟実習を開始する2年生や編入生,大学院生,新たに着任した教員を対象として,麻疹,風疹,流行性耳下腺炎,水痘,B型肝炎の抗体価を測定し,抗体が陰性であるものまたは判定保留となったものについて予防接種を受けさせるといった予防を中心とした感染対策を実践してきた。本年,臨地実習中の学生から百日咳の診断がなされたのを契機にして,看護学専攻感染対策委員会(handai-kango infection control committee;KICC)が新たな感染症対応システムを構築したのでここに報告する。
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