連載 大学ジャーナリストの取材ノートから・8
「悩みを抱え込む学生には異世代交流を」―リアリティ・ショックを超えられる人
石渡 嶺司
pp.739
発行日 2010年8月25日
Published Date 2010/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101547
- 有料閲覧
- 文献概要
看護界でリアリティ・ショック(学生が実際に社会人として勤務してから出会う,理想と現実社会とのギャップ)が大きな話題になっているそうですね。一般企業でも,昔から“五月病”などと言われて問題になってきました。言葉としてはさすがに死語になりつつあるとはいえ,新入社員が現実とのギャップに悩むのはよくあるということです。学生や若手社会人を取材していて思うのは,「要領」の良し悪しで大きな差があることです。
はっきり言いますと,「要領のいい人」だとリアリティ・ショックに陥っても,簡単に乗り越えていきます。ここで言う「要領」とは“仕事の飲み込みの良し悪し”ではありません。誰かに相談できるかどうか,他人からのちょっとした一言を,いい意味で流せるかどうか。例えば,“初めてのお遣いに行った子ども”のことを考えてみてください。店員に「○×ありますか?」と自分から聞くことができる子どもと,自分一人で探そうとする子どもで,どちらがお遣いを早く済ませられるでしょうか。後者だと見つけられずに店内をうろついた挙げ句,泣き出して果たせないかもしれません。学生や社会人も事情は同じです。悪く言えば他者依存,甘えかもしれません。が,人が自分一人でできることなどごくわずか。それをわからずに,何でも自分一人でやろうとするのは無理があります。その点,先輩などに相談できる人は要領がいいと言えるでしょう。
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.