焦点 ひらかれゆく当事者ケア
「ひろいあう」ということ
熊谷 晋一郎
1
1東京大学先端科学技術研究センター
pp.292-295
発行日 2010年4月25日
Published Date 2010/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101439
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不安から「課題」へのブレイクスルー
私は脳性まひで車いす生活をしている小児科医です。18歳で上京し,以後一人暮らしをしています。
一人暮らしを始める前までは,身の回りのことはほとんど親にすべて手伝ってもらっていました。ニーズを言葉にしなくても,まるで自分の手足のように親が動くような生活では,どこまでが自分でできるのかが分からないままです。それは,「私」と言うものの輪郭ができあがっていない状態といえるかもしれません。その頃私は「いつか親は自分の面倒が見られなくなる,そのあと自分はどうなってしまうのだろう」という漠然とした不安を抱えており,早いうちに親から離れて一人暮らしをしたいと思っていました。
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