書評
―『ウエルネスからみた母性看護過程+病態関連図』―学生を“ウエルネスに基づく”看護診断に導くために
松岡 恵
1
1静岡県立大学看護学部母性看護学・助産学
pp.959
発行日 2009年10月25日
Published Date 2009/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101328
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看護学生の多くが,母性看護学の看護過程の展開を苦手としている。その理由は,「看護問題がみつからないから」「何を問題としてよいかわからないから」である。たしかに,他の看護領域では,受け持ち患者に何らかの訴えがあるので,看護問題とすべき現象を見つけることが比較的容易かもしれない。それに対して,正常経過の妊産褥婦を受け持つ母性看護学の実習では,ケアの対象は基本的に健康である。そのため,極端な場合,学生が何も気づかず,何の看護を提供できなくても,母子は元気に退院していくこともありうる。
「正常であること」「健康であること」を診断するためには,起こりうる異常や疾患を予測し,それらすべてを否定しなければならない。学生は,ヒントとなる訴えのない状態から,これまでの学習に基づく知識を駆使し,起こりうる異常を予測し,異常があった場合に認められる兆候を観察項目として挙げなければならない。これが,母性看護学の実習で学生がつまずく「経過の予測」である。起こりうる異常を予測して観察するためには,十分な知識と正常と異常との判断基準を理解していなければならない。そのため,学生にとって,母性看護学は「とにかく覚えなければならないことが多い」科目であり,それゆえに「母性看護学は苦手」となるようだ。
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