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本書は,先に出版されている『高齢者ケアの考え方と技術』および『認知症ケアの考え方と技術』に続く本である。加齢と疾病(認知症含む)によって,暮らしていくことに手助けが必要になった高齢者に対し,優しいまなざしとその必要度に添って具体的な手の差し出し方を示してくれていたのが前書であるとすれば,本書は高齢者に必要なケアを進めていく過程を具体的に示し,著者の高齢者ケアの考え方と技術がケアチーム実践に結びつけられるように意図されている。本書の特徴は前2冊で示されていた考え方と技術を6領域に焦点化し,6領域をアセスメントシート,統合シート,ケアプラン作成の基本軸にして展開していることにある。著者は「高齢者ケアは暮らし重視であり,障害をもっていたとしてもこれまでの暮らしが継続できるように,高齢者と家族に対してチームケアの機能を十分に果たすことが求められています」(序から)と述べ,そのケアのために選択された6領域は,健康領域,安全領域,自立支援領域,安心領域,個別性領域,支援体制領域である。高齢者ケアの場は在宅,施設,病院と多種多様で,福祉と医療ニーズは重なりながら高齢者の暮らしの中にある。6領域は看護と介護の共通言語として,お互いの強みを生かし柔軟な発想でケアを創造していくことに貢献すると考える。
ケアは意図的な課題達成のための一連の実践活動である。そのためにアセスメントが重要であると著者は述べ,本書では情報項目とする理由と内容,アセスメントの根拠について前書2冊の内容も盛り込み丁寧に記述している。是非,この6領域で展開されているアセスメントシートを使って,チームで気になっているケースを取り上げ,事例検討に取り組むことをおすすめしたい。どこにあっても,高齢者の望む暮らしが継続できるよう柔軟で適切なケアプランを導くだろう。
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