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ベッドメーキングを含めた療養環境調整技術は,基礎教育の演習科目のなかでも,初めのほうに組み込まれていることが多いと思う。それは,ナイチンゲールの著書を引用するまでもなく,療養環境調整技術が看護にとって基本中の基本であり,科学が進歩した現代においても不変のことだからである。また,実際の演習内容を考えてもベッドサイドで行われる生活援助技術に先だって,ベッドメーキングの技術を学修しておくことは不可欠である。なぜなら,学生は演習の最後に自分たちが使ったベッドを作り直して,クローズドベッドの状態で演習終了とすることで,演習のたびに自ずと反復練習することになるからである。このように基礎教育の中で,繰り返し練習して修得する技術なのだが,臨床現場では,シーツ交換を実際に行っているのは看護師ではないところも増えてきた。つまり,看護師が行うのは重症な臥床患者や夜勤帯に限られているようである。また,リネンも平面シーツからボックスシーツ,上シーツとスプレッドからカバーリングタイプに変わりつつある。けれども,厚生労働省の『看護師教育の技術項目と卒業時の到達度』に示されているように,「患者にとって快適な病床環境を作ることができる」「基本的なベッドメーキングができる」は,単独で実施できる(I)とされ,「臥床患者のリネン交換ができる」は指導のもとで実施できる(II)ものとして明確になっている以上,基礎看護技術項目からはずされることは当分ないだろう。特に,基本的なリネンの取り扱いとベッドメーキングができなければ,臥床患者への安全で安楽なリネン交換はできない。従って学生は,患者にとって快適な病床環境とは何かをきちんと理解し,ベッドメーキングが単独で実施できることをめざし,基本を十分に修得する必要がある。このような反復練習が必要な基本技術は,視聴覚教材が学生の自己学習をすすめていくうえで強力な“助っ人”となる。特に,DVDのメリットはタイトルメニューで見たいところや,リピートがクリックひとつで容易にできることである。
本DVDでは,この単元を学修するうえで必要な知識や技術が十分に網羅されている。特に在宅療養者の環境調整については今後ますます重要となってくることが予測される。最後の「環境調整に用いるボディメカニクス」では,やってはいけない例なども入れてもう少し多く例示してもらえたらと思う。なぜなら,多くの学生が演習の後に腰痛を訴えるからである。このときを絶好のチャンスと,ボディメカニクスの重要性を強調できるのでまさに“生きた学修”にはなるのだが,やはり腰痛にならない身体の使い方を含め,正確な知識と根拠ある技術をこのようなDVD教材で学修してもらうことを願う次第である。
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