特集 “いのちの授業”を学生に贈る
“いのちの教育”の展開―スクール・カウンセリングの経験から
近藤 卓
1,2
1東海大学文学部心理社会学科
2子どもといのちの教育研究会
pp.1026-1029
発行日 2008年11月25日
Published Date 2008/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101063
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“いのちの教育”とは
子どもや若者の間に起こるいじめの問題,自傷行為や自殺の問題,凶悪事件の頻発などから,世間の目が“いのちの教育”に向いているように感じられる。しかしながら,いじめや自殺あるいは凶悪事件が,最近急激に増加したという統計データはない。自殺といえば,むしろ中高年層の問題のほうが深刻であるし,青少年による凶悪事件などはむしろ減少しているとの報告がある1)。
では,なぜいのちの教育が必要とされるのであろうか。筆者は,自身が30年来行ってきたスクール・カウンセリングの経験から,それを明確に語ることができると思っている。カウンセリング室へやってくる中学生や高校生の言葉として,「自分には価値があるのだろうか」とか「自分には生きる意味があるのだろうか」,そして「自分は生きていていいのだろうか」といった不安感が語られるのを,カウンセラーとして何度も聞いてきたからである。それらの言葉は,自尊感情の弱さから出てくると筆者は考えている。彼らは自分自身の存在に確信が持てず,「自分自身のいのち」に対する不安感を持っているのである。
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