連載 シカゴ通信&JNEセレクション・10
学問上の「不正行為」の定義について
岸 利江子
1
1イリノイ大学看護学研究科博士課程
pp.986-987
発行日 2008年10月25日
Published Date 2008/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101050
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学問に必要な倫理観
私はこの1年間半,教務・入試委員会にもかかわっています。出願時の推薦状の様式を見直すときに,“academic integrity”という言葉が国際的にどのくらい理解されているのだろうと気になりました。ここでは「学問に必要な倫理観」と意訳しておきます。つまり,“試験でカンニングをしない,他人のアイディアや言葉を自分のものとして発表しない,過ちは正直に認める,有益な情報は進んでシェアする,えこひいきをしない”などの倫理観と行動とを指すものです。もちろん学生だけでなく,教員や事務局の人々にも,共通の認識と行動規範が求められています。
入学以来,看護学部だけでなく,公衆衛生学部,社会学部,教育学部など他学部の授業もとりました。そのどのシラバスにも共通して見られるのは,レポートを書く際のスタイル(APAスタイルなど)の指定と,“plagiarism”についてです。剽窃,つまり盗用行為のことで,試験のカンニングと同様,不正行為です。教員が学生の盗用行為を発見するためのソフトウェアも普及しています。盗用がみつかれば単位はもらえず,レポートを書き直すチャンスも与えられず,公式の記録に残ります。「ルールを知らなかった」「悪気はなかった」は理由になりません。大学によっては何が不正行為かについて理解するためのトレーニングを義務化しています。
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