交見室
なぜ続く論文不正
勝岡 洋治
1
1ポートアイランド病院
pp.687
発行日 2015年7月20日
Published Date 2015/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413205415
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昨今,科学論文の不正問題が取りざたされている。世紀の大発見として注目を浴びたSTAP細胞作成に関する論文は,データの改ざんを行ったとして,筆頭著者を含む関係者の不正行為が断罪された。また,某国立大学の基礎研究室より国際的に評価の高い一流雑誌に投稿され掲載済の論文の数編に改ざんの疑惑がもたれている。そのほかにも有数の研究施設からの投稿論文に捏造,改ざん,盗用の疑念が生じているものがあると報道されている。そうした論文の不正が次々に行われる背景について,識者のコメントが紹介されているが,一様に多くの研究者が研究費を獲得のためのプレッシャーを受けているとためと解説している。今日の研究は大型化,高度化しており1人でできるものではなく,それぞれの専門分野の人たちが参加しているので,ハイテク機器や機材の購入に加えて人件費などの費用が嵩む。昨今の外部資金の導入に関する不祥事として,降圧剤の臨床治験の成績に不正行為があり,治験に参加した複数の大学病院が摘発されている。これらの施設には多額の研究費が薬品メーカーから支給されていたことが明るみに出た。
また,研究成果を上げることにより身分保障と昇格につなげようとの意思が働いていることも否めない事実であろう。特に若い研究者は身分が不安定であり,生涯にわたる生活保障がない。1日も早く,研究結果をまとめ,斯界より高い評価を得たいとする逸る気持が,コピー・ペーストや加工に手を染める要因と思われる。さらには,産学官共同や医工連携の研究分野では特許取得のために非公開で研究が行われている場合が多く,データの改ざんを見抜けない。
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