連載 医療と社会 ブックガイド・86
『社会福祉学の〈科学〉性─ソーシャルワーカーは専門職か?』その2
立岩 真也
1
1立命館大学大学院先端総合学術研究科
pp.894-895
発行日 2008年9月25日
Published Date 2008/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101032
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前回から,次のようなことが書かれる,三島亜紀子の本を紹介している。
「よりよいソーシャルワーク理論を追い求め社会福祉実践の「科学」化を進めることによってソーシャルワーカーは専門家になるといった考え方は,この学問の草創期から約半世紀もの間,専門職化を語るうえで前提とされていた。しかしながらこれに対し,突然異議が唱えられた。一九六〇年代からの反専門職の思想である。専門家として,あるいは学問として社会的に承認されないまま,ソーシャルワーカーそして社会福祉学は批判されることとなった。そこでは社会福祉学の「科学性」を高める客観主義的な学問のあり方が,パターナリズムの温床となると指摘された。マルクス主義者たちは資本主義体制を基盤に福祉国家が成立している点を非難したが,その彼らさえ否定しなかった,知そのものが標的とされたのである。これまで骨身を削って重ねてきた「科学」化への努力が無意味とされただけでなく,「科学」化によってソーシャルワーカーの専門性が高まるという考え方こそが危険であると指摘された。
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