連載 リレーエッセイ 医療の現場から
ソーシャルワーカーのジレンマ
樋口 明子
1
1財団法人がんの子供を守る会
pp.271
発行日 2006年3月1日
Published Date 2006/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100195
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人は解決しなければならない問題が起こった時,それまでに蓄えてきた知識や経験を以ってまずは解決しようとする.例えば出勤時にいつも乗る時刻の電車が信号機故障で止まっていたとする.構内アナウンスでは「しばらくの間,停車いたします」としか状況説明をしない.これまでの経験では「しばらくの間」は自分にとっては「かなりの時間」になることもあり,そうなってしまうと動き出すのを待っても始業時刻には到底間に合わない.そこで,自身の持っている知識,つまり多少遠回りすることにはなっても,職場までの別の交通経路があり,またその最適なルートは携帯電話で容易に検索することができる,という知識を以って経路検索をし,職場に連絡をし,検索結果の中でも最速でかつ乗り換えの少ない方法を選んで職場へ向かうだろう.
しかしながら自分または,大切な家族の一員が病気になった時,ましてや命に関わる大きな病気に罹った時等,これまでの生活の中では考えたこともなく,経験もしていない出来事が起こった時はどうだろう.
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