特集2 看護学生論文―入選エッセイ・論文の発表
エッセイ部門
共感的態度で
佐藤 美幸
1
1自衛隊中央病院高等看護学院
pp.678-679
発行日 2008年8月25日
Published Date 2008/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100978
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一人でひとりの患者さんを受け持つ,初めての実習。実習先は外科病棟。患者さんは老年期のかただった。
ぶつかった壁はやはりコミュニケーション。身近にお年寄りと呼べる存在がいなかった私は,高齢者のかたと話をすることに慣れていない。しかし,人と話すこと自体が苦手なわけではないので会話はなんとか続く。いわばキャッチボールはできる。問題はその先。患者さんは皆70,80代で,私の何倍も長い人生を歩み,私の何倍も多くの経験を重ねてこられた方々だ。その話の中には,戦争の苦しみ,家族や友人の死,自分の病気のことなど,私が経験したこともなくまた想像すらできないこともたくさんあった。私は相手がどのような思いでその話をしているのかがわからず,またどう反応したらいいのか,相手がどのような反応を期待しているのかもわからなかった。とりあえず投げ返すことができても,どういうふうに,どこに投げるべきかがわからないのだ。
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