連載 プラトンからはじめる教育学入門・11
2つの対話:教授的コミュニケーション
山口 栄一
1
1玉川大学教育学部
pp.558-561
発行日 2008年6月25日
Published Date 2008/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100947
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対話の2つの形
教育は,子どもをよくしたいと思って働きかけることです。とはいえ,「よさ」とか「よい人」とは何か,それがいつまでも続く問題です。プラトンでは,よい人というのは、時計のアレテー(徳)が時を正確に刻むことであるように,人間としての<アレテー>においてすぐれることです。そのためにこそ,身体を強くし,魂を鍛えねばならない。人間のアレテーは,知るということと不可分だ,というのが一貫した立場。知らないということは危ういこと。たとえ動機が純粋でも,その判断が誤りやすいのは言うまでもありません。
カリキュラムとは,よい人への支援を意図的,組織的に計画したものにほかならない。プラトンの幼少期のそれでは,物語,音楽,体育を,そして,10歳からは,読み書きを学んだ後は,代数,幾何,物理学など,理数系の科目を学ぶことでした。当時はそうした科目が先進的であるだけでなく,数学と物理学は今日でも私たちの世界観の基底を支えるものですから,それらを重視したことはひとつの教育論としても傑出しています。
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