連載 東洋医学講座 鍼灸医学を中心に・8
整形外科領域における鍼灸治療―膝痛・腰痛・頸部痛(肩こり含む)を中心に
伊藤 和憲
1
1明治国際医療大学臨床鍼灸学教室
pp.552-557
発行日 2008年6月25日
Published Date 2008/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100946
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はじめに
鍼灸院を訪れる患者の3大症状は,「膝痛・腰痛・肩こり」と言われるように,鍼灸臨床における整形外科疾患の占める割合は高い。そのため,整形外科疾患に関する鍼灸治療の報告は他領域に比べても多く,医学的に高いエビデンスが確立しているものも存在している。これらの文献と自分の経験から言えるのは,エビデンスをもって鍼灸治療が勧められる疾患は,膝痛・腰痛・頸部痛の3つ,それも神経学的に異常が存在しない疾患,ということにある。これらの疾患に対しては,鍼灸は他の保存的療法と同等かそれ以上の効果が期待できるとともに,安全性・コストの面から考えても有用な治療法といえる。
一方,上記の疾患以外には,現在のところ明確なエビデンスは確立していない。しかしながら,しびれや慢性疼痛患者に対しても鍼灸治療が効果的であるとする報告は年々増えており,痛みや運動機能の改善以外にも整形外科領域で果たす役割は大きくなるものと考えられる。
ここでは,整形外科領域で鍼灸治療がどのような役割を担っているのかをまとめるとともに,膝痛・腰痛・頸部痛に対する効果について述べ,今後の整形外科領域における鍼灸治療の可能性について解説したい。
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