連載 プラトンからはじめる教育学入門・9
プラトンの初等教育
山口 栄一
1
1玉川大学教育学部
pp.362-365
発行日 2008年4月25日
Published Date 2008/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100908
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教える技術と教育
「教える」ためには,図に示す3つの知識が必要です。看護教育では,看護についての知識がなければ教えられないことはあたりまえです。しかし,その知識があれば教えられるかといえば,そうではないのですね。それだけでは,学習者にいらいらしたり,努力がたりないといったりすることになります。わからない原因を学習者に一方的に帰属させるのは,学習者についての知識がないために起こります。彼らはどこにつまずくのか,どのような知識をもっているのか,どうすることでやる気がおこるのか,といったことを知ることは,私たちにとっての欠かせない知識です。また,「わかる」「できる」とはどういうことなのかを探究し,内容を学習者に合うように組織化するのは,方法の知識です。方法とは,けっして教室での直接指導だけではありません。
プラトンの議論とは,「教える」ということの背景にある問題に目を向けることにあります。教えることは学ぶことに対応しているとしても,<教える=教育>ではない。わるいことを教えたり,教えることが結果としてわるいことがあれば,私たちはそれを「教育」とはよばないからです。
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