視座
初等・中等教育と医学部教育
馬場 久敏
1
1福井医科大学整形外科学講座
pp.681-682
発行日 1999年6月25日
Published Date 1999/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408902722
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現在,我が大学でもチュートリアル教育,clinical clerkship,教育カリキュラムの見直し,教官のexternal evaluation,国立15大学における卒後臨床研修プログラムの統一化,卒後臨床研修に関連した教育関連病院の見直し,等々に向けたいろいろな作業が本格的に行われています.そのような矢先,先頃,NHKテレビで有馬文部大臣が“初等教育における学級崩壊”について全国調査を開始する旨の番組を見ました.これはわれわれ高等教育に関わる者にも極めて重大な関心事であり,時間がかかつてもかかる問題に本気で取り組んで欲しいと思います.何故ならば初等・中等教育は個人の人格形成に最も影響する問題ですし,ひいては学部教育や専門教育にも極めて重大な結果をもたらすからです.味覚や食習慣の中枢回路形成は12~13歳前後でほぼ決定され,ヒトの終生に亘る食習慣はその回路網が基盤になるといいます.人格形成は基本骨格の上に何度も塗替えとreorganizationが起こってその回路網が形成・完成されますが,社会的良識あるいは道徳といった“わく”が些細なことで外れますと,個人あるいは特定のグループの放縦かつ“自由な行動”が重大な社会問題を引き起こします.“21世紀の大学像”,“全国医学部長・病院長会議記録”などを読みながら学部教育,整形外科卒後臨床教育について考える折,ふとそのような初等,中等教育にまで思いを巡らせてしまいます.
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