連載 プラトンからはじめる教育学入門・8
―認識論と教育(3)―学習とは,社会化と脱社会化
山口 栄一
1
1玉川大学教育学部
pp.260-263
発行日 2008年3月25日
Published Date 2008/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100885
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イデア論をふりかえる
前号で太陽の比喩,線分の比喩を通して語られたのは,「知る」とはどういうことであるのかについてのプラトンの答えでした。私たちが知ることができる根源には「善のイデア」があり,また,その根源をみようとする能力と意志が,知性として私たちに組み込まれているのです。一方,私たちの目の前には,個々のもの,すなわち,現象(似像)があり,私たちが信じられるものは,私が見た,聞いた,という経験しかない。それを絶対視すれば,つぎのようなことになります。
とくに,つぎつぎと通り過ぎて行く影を最も鋭く観察していて,そのなかのどれが通常は先に行き,どれが後に来て,どれとどれが同時に進行するのが常であるかをできるだけ多く記憶し,それにもとづいて,これからやって来ようとするものを推測する能力を最も多くもっているような者には,特別の栄誉が与えられることになっていた。 (プラトン『国家』岩波文庫,下巻,p99)
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