特集 コミュニケーション技術の習得
患者から見た医師と患者の信頼関係について
桑野 ゆめ
pp.407-411
発行日 2007年5月25日
Published Date 2007/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100665
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昨年10月,私は腹式子宮全摘術を受けた。ただでさえ病気は人を暗くするし,どんな人でも手術は恐い。ましてや女性にとって子宮全摘は,思い出したくないようなつらい体験にもなりえる大手術だ。ところが,私にとってこの体験は今後もずっと大切に覚えておきたい感謝の体験となった。子宮筋腫というごく一般的な良性疾患の治療に際して,医師が一貫してプロフェッショナルに患者と向き合い,信頼を築いてくれたことによって,ひとつの医療体験が単に病気を治すという以上のものを私にもたらした。
勤務先指定の定期婦人科検診で要精査となって以来,私は市内のA病院を受診していた。しかしそこで重ねて心ない扱いを受けたことで,私はちょっとした婦人科恐怖症に陥り,病気治療に無気力になった。病院を敬遠する気持ちとは裏腹に,自覚症状は日常生活のなかで大きな負担となっていったが,どうしてもA病院を再受診する気にはなれなかった。いよいよごまかしきれなくなった昨(2006)年4月,困惑の病院探しの末に見つけたB病院を受診した。紹介状なしの初診だった。診察室に入ると医師はまず,「産婦人科の町田です。よろしくお願いします」と私に挨拶をした。驚いた。医師が患者に自己紹介の挨拶をするなんて初めてだった。
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