随想=私の出会った患者
患者と医師の信頼関係
高科 成良
1
1広島県厚生連広島総合病院
pp.155
発行日 1982年2月1日
Published Date 1982/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207676
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私は医師になり20数年たったが,今過去を振り返ってみると,永かったようにも思え,また逆に一瞬のうちに過ぎたような気もする.心に残っている患者さんについて書くよう依頼されてみると,多数の患者さんと接してきた割には,そういう人は少ないことに思い当たり,日常の診療を漫然と行ってきたのではないかと,大いに反省させられている次第である.
大学を卒業し,インターンを済ませて医局に入ったころは,もちろん一人前に患者さんを診察させてもらえず,偉い先生のシュライバーなどをさせてもらって,一つ一つを頭にたたき込んだものである.次第に時間もたち,一人で診療するようになってから,以前覚えた偉い先生と同じ処方を出しても患者さんの状態はよくならず,その患者さんが再び偉い先生の診療を受け,同じ薬をもらって状態が改善してゆくのをみて,頭にきたことがよくある.後になって考えてみると,患者と医師の間の信頼関係がないと,同じ薬を投与しても効果は異なってくるものであることが分かり,以後の診療に大変参考になった.大学から離れ,今の病院に勤務して10数年が経過したが,この間,私の専門である内分泌,特に糖尿病の患者さんとのつきあいが80%を占めており,10年以上フォローアップしている人が多数を占めている.
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