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はじめに
ここ20年間のコンピュータの性能向上は,画像情報を含む双方向通信を身近に行える環境をもたらした。この進歩は社会のあらゆる分野で活用され,看護教育の分野でも遠隔教育に活用されている。
塚田ら1)は,32名の学生に対してテレカンファレンシングを中心にした国際遠隔授業を実施し,学生の高い満足度と,米国の先進的な看護の考え方を学ぶことができたことを報告している。テレカンファレンシングとは,別の場所にいる人の顔が見え,声が聞こえ,さらにいろいろな資料を画面に表示しながら参加者全員で同じものを見て検討できる遠隔コミュニケーションシステムの一種である。これを講義に応用すれば,複数の講師が別々の場所から一つの講義に参加して,学習者と質疑応答を行う中での学習が可能になる。また,豊田ら2)は,4~8名のマルチメディア住宅に住むモニターに対する遠隔健康講演を実施し,マルチメディア教材の現状と課題を明らかにしている。
一方,双方向通信を活用した授業は,質疑応答を行うことを前提に,少人数クラスへの適用3)はなされているものの,学部教育などの多人数クラスには適用しにくいのが現状である。
三重県立看護大学では,1クラス100名程度の学部学生に対し精神看護学領域の講義にテレカンファレンシングによる遠隔授業を取り入れており,精神看護学の先進的な米国における看護アセスメントの実際や,クリティカルな状況での看護実践についての学習を過去4年間行ってきた。
精神看護学領域で必要とされるこころの健康や精神看護の技術と概念は,国や地域によって異なり,わが国におけるこころの健康や精神看護の技術と概念を捉えるだけでは,国際化する社会に対応できないばかりか,今後,世相などの社会変化にともなって変化するこころの健康と対策を学ぶことが不十分になる。文化圏の異なる地域からの遠隔授業で,看護アセスメントやクリティカルな状況での看護技術を学ぶことは,こころの健康概念,看護技術やアセスメントを社会背景との関連で考えるきっかけになり,国際的視野にたつこと,および最新の知識と技術を修得することが可能になる。
本稿は,三重県立看護大学で実践してきた遠隔授業を学生の授業評価から振り返り,テレカンファレンシングによる100名規模の遠隔授業を検討することを目的とする。
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