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はじめに
フィジカルアセスメントは看護実践の基盤であり,The American Assosiation of Colleges of Nursing(AACN)では,看護教育においてコアとなる能力の本質的な構成要素であると位置付けている1)。わが国では,1994年にはじめてフィジカルアセスメントという言葉が使用された2)。その後,医療技術の変化,少子高齢化といった社会情勢の変化,医療経済の変化など,看護を取り巻く環境は大きく変化し,看護師による専門性の高い判断力・実践力が求められ,フィジカルアセスメントは急速に看護基礎教育に取り入れられた。近年の国家試験の問題をみても,心音聴取部位や,寝たきり患者の重点的呼吸音聴取部位など,フィジカルアセスメントに関する問題が増え,アセスメント能力を求めていることがうかがえる。
また,現在施行のカリキュラムは1997年に大綱化されたものであるが,総時間数の減少と,専門分野の領域・内容の提示のみで,科目の設定等は各学校の自由裁量に委ねられている。このような弾力性のあるカリキュラムは,各教育機関で独自性のある教育ができる一方で,知識の偏りや技術教育の削減などが生じやすく,学生の実践能力の育成に大きく影響しているのではないかと指摘されている3, 4)。特に基礎看護技術以外の各看護学における技術教育は,基礎看護技術以上に模索状態であることが指摘されている5, 6)。
わが国において過去10年の間に導入されたフィジカルアセスメント教育に関する研究をみると,Yamauchiが臨床看護師を対象に行った調査の結果,教育プログラムの必要性が示唆されたという報告7)や,教育方法を学生の主観的評価から検討した報告2, 8)や,1999年でのアセスメント教育の実態調査報告9)など,まだ十分な検討がなされていない。フィジカルアセスメント教育の重要性は認識されているが,現時点で何をどこまで教育するかは明確ではなく,他の技術教育と同様に模索状態である。したがって,人々が看護師に求める能力育成に応えるべく教育を効果的に行うために,フィジカルアセスメントの教育内容・教育方法を検討する時期にきているといえよう。そこで,教育内容・教育方法を検討するための第一段階として,現在行われているフィジカルアセスメント教育の実態を調査したので報告する。
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