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はじめに
起き上がり介助動作は看護師のみならず,看護学生にとって実施頻度の高い看護技術である。看護師は,対象に必要であると判断すれば,あらゆる体格の患者に起き上がり介助をしなければならない。それでは,学生は単独で自信を持って起き上がり介助を実施できているのだろうか。また,自分自身では「できる」と考えていても,ボディメカニクスを活用した望ましい姿勢での介助が実施できているのだろうか。
車椅子移乗介助の研究1)では,熟練者の特徴の一つに,固有の重心移動パターンを示すことを挙げている。個々の臨床現場での豊富な移乗介助経験の中で,個人固有の介助動作が体得された結果ではないかと推測している。
知識が磨かれ,新たに体得した実践的介助動作,つまり「こつ」は,臨床経験を積むことでつかむと言われるが,臨床現場で体得した固有の介助動作こそ,知識ではない「こつ」であると推測する。それは,起き上がり介助でも同じであると考える。では,その「こつ」とは一体何なのかという疑問が生じた。そこで,それを明らかにするため,熟練者と未熟練者を対象に,起き上がり介助動作を視覚的・数量的に明らかにしたいと考えた。
しかし,介助動作を数量的に評価することは困難である2)。そこで,三次元解析装置を用いることにした。二次元では取得したデータをもとに軌跡残像を形成することが可能となり,三次元では立体的に動作を捉えることが可能となる。ビデオ映像ではわかりにくい各部分の屈曲角度や動作をより端的に表示することが可能となる。よって,三次元解析装置を用いて起き上がり介助動作を視覚的・数量的に比較分析することにした。
以上のことから,学生が実施する頻度の高いと思われる仰臥位から端座位への起き上がり介助動作において,看護学生と臨床経験があり熟練していると考えられる看護教員とでは,熟練度の違いから介助動作にどのような特徴や相違があるのかを,三次元解析装置を使用してボディメカニクスの観点から検討し,熟練者が身に付けている動作を明らかにすることを目的とした。
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