特集 射水市民病院の人工呼吸器取り外し問題が提起したこと
終末期ケアの現場に紛れ込んだ異邦人として
服部 洋一
1
1東日本国際大学
pp.798-802
発行日 2006年10月1日
Published Date 2006/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100369
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はじめに─
米国の「在宅ホスピス」から
終末期ケアに関心を持つ文化人類学者に過ぎない私が,いわば医療者や患者・家族の肩越しに現場を眺めるようにして語れることは,ごく限られている。小論では,私が2000年から断続的に1年余のフィールドワークを行ってきた米国ホスピスのケアの現場を紹介したい。異国の地で,ホスピスの現場という未知の世界に入った私は,二重の意味で異邦人であった。そこで見た栄養・水分補給の不在について素描することから話を始めよう。
米国は現在世界でもっとも多くのホスピスを有する国である。全米ホスピス緩和ケア協会の集計によれば,同国には2004年の時点で3650のプログラムが存在し,年間延べ106万人の患者をケアしている1)。これらのプログラムのほとんどは,ナースを中心とする多職種チームが患者の「家」を訪問してケアを行う「在宅ホスピス」である。括弧書きにしたのは,文字通りの患者宅に加え,老人ホームや病院の一室が,患者が自分の住処に選んだ家に準ずる場として,ホスピス・チームの訪問先になることがあるからである。
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