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はじめに
2003(平成15)年3月26日,保健師助産師看護師学校養成所指定規則の一部を改正する省令(文部科学省・厚生労働省省令第1号)が公布され,いよいよ今春から「看護師2年課程通信制」(以下,2年課程通信制)がスタートする。
「准看護婦の移行教育に関する検討会報告書」から4年,「准看護婦問題調査検討会報告書」から7年,そして准看護師が看護師免許取得の機会拡大を求めはじめてから実に30年余もの歳月を経てようやくの具体的な動きである。省令公布後は,各地の都道府県看護協会や自治体主催の説明会が開催されているが,その多くが募集定員を超える盛況ぶりだと聞く。初年度となる2004年度の開校数は多くの期待に反しわずか3校にとどまったが,長らく“道の拡大”を待ち続けた多くの准看護師たちが期待と不安をもって注目する中,制度問題はいまひとつの節目を迎えたといえよう。
ただし,果たして今回の2年課程通信制が単なる場あたり的措置に終わるか,あるいは准看護師制度問題の解決を促進するものになるかは,すべて今後の展開次第である。以下本稿では,今回の看護師2年課程通信制の意義と問題点,および今後の展望について考察してみたい。
まず冒頭で確認しておきたいのは,今回の「指定規則改正」すなわち2年課程通信制の設置とは,あくまでも従来の指定規則の<一部改正>であり,准看制度問題の解決に直接つながる制度改正すなわちいわゆる「移行教育」ではないという事実である。移行教育と2年課程通信制の主要な相違点については後述するが,結論からいえば筆者自身は,今回の2年課程通信制は,制度問題をめぐる関係者の利害対立の結果としての妥協の産物,いわば“移行教育もどき”にすぎないとみている。
それゆえ筆者は,今回の2年課程通信制は,われわれ看護職者が「准看護師養成停止と希望者全員への移行教育の保障」を目標として明確に見据え,その突破口として<戦略的に>利用する限りにおいてのみ意義があると考えている。もしも准看護師養成停止の展望がないまま続くなら,これは単に看護師養成課程の複線を1本増やしただけの,むしろ制度の矛盾を深めるものにしかならないだろう。
言い換えるなら今回の2年課程通信制は,1996年の「准看護師問題調査検討会報告」(以下,検討会報告書)以降今日まで,制度問題解決になんら有効な手立てを講じることができなかったわれわれ看護職者に残された,最初にしておそらく最後のチャンス──ある意味で危険な“賭け”にも似たチャンス──であると筆者は考えている。
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