特集 災害看護学構築に向けて・2
大学院で災害看護を研究している立場から
浅見 貴子
1
1福井大学大学院医学系研究科
pp.233-235
発行日 2006年3月1日
Published Date 2006/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100238
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災害看護との出合い――福井豪雨での体験
私がこの分野に興味を持つようになったのは,2004年に起きた集中豪雨の災害ボランティア活動と被災体験がきっかけだった。集中豪雨で被災した新潟県三条市での災害ボランティアに参加した翌日,看護師として勤務していた病院で福井豪雨を体験したのだ。生まれ育った町が一気に泥の海と化していった様子に茫然とし,不安を募らせる患者に「大丈夫ですよ」と声をかけることしかできなかった。
自宅に戻り,自分に何ができるかと考えた結果,血圧計と聴診器をもち,とにかく近所の避難所に行くことにした。一人ひとりに声をかけ,心疾患の内服薬を持たずに避難してきてしまった人や,水分を摂取しようとしない寝たきりの高齢者などへの対応を考えながらふと入口を見ると,避難所内や1つしかないトイレも浸水が始まっていた。頭の中が真っ白になり,避難所の環境をどのように整えたらよいか,住民にどのような援助が必要なのか,冷静に判断することができなかった。
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