特集1 看護学生の論文―優秀賞・入選論文の発表
看護学生の論文11編
不安をもって生活している患者の看護―認知症や右空間失認のある患者との関わり
福永 裕子
1
1滋賀県堅田看護専門学校
pp.622-624
発行日 2005年9月1日
Published Date 2005/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100095
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はじめに
認知症の要因の大部分は,病的な原因によるものであるといわれている。認知症の状態は一様ではなく,原疾患,部位,広がり,進行度,随伴する精神症状などによって,さまざまな状態がみられる。また,症状は認知症高齢者への対応の仕方,あるいは環境の変化によって悪化してしまうおそれがある。
今回,私が受け持った患者は,認知症状に加えて,神経因性膀胱による頻尿症状,精神的不安や活動量低下からくる強度の便秘症状が続いていた。非常に不安定な状態で,泣き叫ぶ,怒鳴るなどが続いた。このような患者に対して看護者としてどのように関わっていったらよいのかを考え,言葉にならない訴えを理解しようと患者の行動を観察しながら関わるうちに,変化がみられるようになった。
「問題行動だけに目をやり対処するのでは改善が難しい。何らかの欲求不満があって本人も気付かずに,二次的な表現として行動していることが多いのだ」1)と,長野が述べているが,私も認知症高齢者がとる行動の意味を知りたいと患者に過去を振り返り,回想してもらった。回想法により,患者は自分の居場所を見つけ,少しの時間であっても笑顔が見られ,安心して過ごせる時間を持つことができたので,この事例をまとめた。
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