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はじめに
失認とは,Frederiks1)によれば「ある感覚を介する対象認知の障害で,しかもその対象認知障害を,その感覚の異常,知能低下,意識障害などに帰することのできないもので,かつ他の感覚様式を介せば,その対象を認知できるもの」と定義される.失認の分類は,この感覚様式によって,視覚失認,触覚失認,聴覚失認,身体失認と分類されるのが一般的である.さらに細かい分類については,研究者によりさまざまな分類がなされており,一般的に使用されるには至っていないのが現状である.
失認の症候学,神経病理学的研究は,古くから,数多くなされているが,リハ医学の分野で,失認を含めた高次脳機能障害が注目され,研究されるようになったのは,わが国では比較的最近のことである.
リハ医学において,高次脳機能障害が重要視されるのは,リハ医学の主要な対象疾患の一つである脳血管障害等の脳損傷患者に,高次脳機能障害の合併が多くみられ,しばしばそれが,リハビリテーションプログラムを進める上での大きな阻害因子となるからである2).また,最近では,失語症に対する言語療法と同様,失認に対しても治療的アプローチがいくつか報告されており3~7),医学的リハビリテーションの治療対象として失認がとらえられるようになってきている.そこで,リハ医学では,単に失認の有無を明らかにするためだけではなく,1人の患者のトータルなリハビリテーションの流れの中で,失認を評価し,治療対象としてとらえ,治療効果を判定するためにも,適切な失認の評価法が必要となっている.
本講座では,リハ医学の分野では報告もなく,まれな病態と考えられる触覚失認,聴覚失認の評価については他の成書にゆずることとし,視覚失認,特に,日常診療において多くみられ,リハ医学の分野での報告も多い半側視空間失認について,日常診療における評価の方法,その問題点などをリハ医の立場から述べることにする.
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