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はじめに
看護師国家試験は平成12年に出題基準が導入され,平成13年の国家試験から出題傾向が変化し始めた。平成16年には必修問題の導入,状況設定問題の充足がはかられ,さらに国家試験の方向は変化しつつある。その背景には,時代の流れや社会情勢の変化から,看護の質の向上が求められるようになり,看護の臨床実践能力が問われるようになったことが考えられている。
国家試験の合格率も,90%を超える時代は終了し,今後は臨床での判断力を問われる問題が多く出題されることが予想されている。看護基礎教育において臨床実践能力としての判断力,応用力,思考力のある学生を育てなければ,看護師国家試験に合格することは難しくなってきているということである。
そのような臨床実践能力のある学生を育てるためには,判断のよりどころとなる基礎的知識を修得させる,それもただ単に暗記させるのではなく,活用できるようにして習得させていくことが必要となってきている。そのためには知識と実践とが連動する臨地実習が不可欠となる。教科書の知識を単に当てはめるHow To的なものではなく,目の前にいる生きた患者に対し,この人の体に今何が起こっているのか,必要な看護は何なのか,なぜそれが必要なのか,など根拠に基づいた個別的な看護実践を考えながら,解剖生理学や薬理学など,専門基礎知識までさかのぼり学習を深めていくようなものでなければならない。
当校では,国家試験を想定した模擬試験を行っている。その結果を見てみると,「人体の構造と機能」としての解剖生理学,「疾病の成り立ちと回復の促進」としての薬理学,疾病論・治療論(病態生理)での点数が低く,これらの知識が身についていないことが判明した。
これらの科目の知識を,「使える知識」として習得させていくには,臨地実習とつなげて学習していくことが効果的とされている。そこで,臨地実習において効果的に学習できる方法を,学生に提示しようと考えた。
まず,実習前にオリエンテーションを行い,実習に積極的に取り組めるような動機づけを行う。そして臨地実習と解剖生理や病態生理の知識をつなげられるような思考のプロセスを整理して,学生に示した。さらにその思考のプロセスを用いた例題等を検討し,導入した。
本稿では,上記学習方法の紹介,およびその効果について報告する。
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