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はじめに
近年,看護学教育を取り巻く環境は大きく変化し,少子化や高齢社会がますます進展する中,医療においても高度化,専門化,個別化に伴う高い水準での安全で倫理的な問題への対応が求められている。また,2004年新卒看護職員の早期離職等実態調査によると,新卒看護師が保有する看護技術能力と現場で期待する能力がますます広がっているとの指摘もある1)。
戦後の看護教育は臨床重視で看護技術は技能訓練的要素が強かった。しかし,1990年のカリキュラム改正以降,また「看護師等の人材確保の促進に関する法律」(1992)の施行も相まって,医療水準の高まりに伴い優秀な看護職員の人材確保が急務となり,科学的に思考できる能力の育成が求められた。
このような背景から,実践能力の低下を憂う声が高まり,文部科学省から「看護学教育の在り方に関する検討会」を設け,2002年,「大学における看護実践能力の育成の充実に向けて」と題した第一次報告書が出され2),2004年,「看護実践能力育成に向けた大学卒業時の到達目標」と題した第二次報告書が文部科学省高等教育局より示された3)。
両報告書の中で技術教育を看護学教育のコアとして位置づけ,実践能力の育成が重要課題であり,卒業時の到達目標としてⅤ群19項目が示された。また,厚生労働省と文部科学省の両省より,「看護基礎教育における技術教育のあり方に関する検討会」報告書に,技術教育の学内と臨地におけるあり方や『臨地実習において看護学生が行う基本的な看護技術の水準1・2・3』が示された4)。
実践の科学である看護学には,豊かな人間性を基盤に,対象者に適切な看護が実践できる知識・技術・判断力がこれまでにも増して求められており,看護基礎教育における技術教育のあり方に大幅な検討が迫られている。このような状況に対し,各看護教育機関では創意工夫したカリキュラムのもとで,「看護技術を統合して学ぶ方法」をはじめ「実践能力別学内演習・臨地実習」や「看護行為別学内演習・臨地実習」の実施,「実習施設との連携の強化」を図るなど,技術教育の充実のための努力がされている。
本学においても,2001年度より学内での技術の学習と臨地実習における実践とが統合できる教育を志向してきた。折から,先に述べた医療従事者養成教育システムの国家的大改革の動きに伴い,その方針を受けて,技術教育の具体的実践に向けて全教員の理解と協力を得て,技術教育のプログラムの改善に取り組んできた。以下に,その概要および具体的内容と成果を示したい。
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