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はじめに
看護教育において,臨床実習の果たす役割は大きい。学生にとっては,臨床実習は学びの多い場である。しかしその反面ストレスもまた多い。その臨床実習の場において,学生に大きな影響を及ぼすのが臨床実習指導者(以下,臨床指導者)の存在である。
中西は指導者について,患者のいろいろな問題に関して,いつでも的確な判断を下しうる学識経験者であり,必要に応じていつでもそういう判断や見識を提供しうる人材として学生にかかわる存在1)としている。つまり指導者には,いま目の前にいる患者に適切な看護を提供するために必要な学習内容を整理し,看護の方向性を学生とともに考え,また,患者との関係を築くための示唆を与えるような実践モデルとして,様々な役割をとる責任があるといえよう。
学生と臨床指導者との関係において,臨床指導者の態度や行動を分析した研究は多い2~9)。最近では,学生に影響を与える臨床指導者の「言葉」や「言動」を分析した研究も増えてきている10~13)。これらの研究からは,学生が援助的または非援助的と捉えた指導者の言動や態度などが明らかにされている。
態度面の評価については,ブルーム(B. S. Bloom)の理論が広く知られている14)。それは教育の目標を認知,精神運動・情意の3領域に分類し,各々の視点で評価をする方法論であり,態度面は特に「情意」という領域で評価するというものである。
今回,臨床指導者の態度や行動について,特に情意という視点で着目し,学生との関係における指導者の様相について検討したい。
また上述の先行研究においては,いずれも病棟側の看護者と学校側の教員の両方を対象としており,病棟側の指導者のみに限定した研究はない。同じ指導者とはいえ,病棟側の看護者と学校側の教員では,自ずと役割が違うものである。
そこで本稿では,学生が4年間のすべての臨床実習の中で経験した「理想的またはやめてほしい臨床指導者の行動」について明らかにすることを通して,指導における態度や行動を情意的な側面から検討し,臨床指導上の示唆を得ることを目的とする。
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