特集 児童虐待—保健婦の役割
保健婦さんに望むこと—“子ども虐待を考える会”活動を通して
椎名 篤子
1
1子ども虐待を考える会
pp.651-653
発行日 1998年8月10日
Published Date 1998/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902911
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日本で子ども虐待に高い関心がもたれるようになったのは,1980年代後半です。当時,一部の医療現場では,診断と治療法が確立されていないこの分野で,すでに試行錯誤の援助が行われていました。児童相談所でも虐待の存在が認識されつつありました。89年に国連総会で子どもの権利条約が採択されると,軽視されがちだった子どもの人権について見直す動きが活発になり,ときを同じくして90年に児童虐待防止協会(大阪),91年に子どもの虐待防止センター(東京)が設立されました。厚生省がケースマネージメントモデル事業に乗り出すなどして全国的な取り組みが進み,現在では,北海道,青森,山形,栃木,群馬,埼玉,東京都,神奈川,静岡,愛知,京都,大阪,和歌山,福岡,沖縄(準備中)などにネットワークが結成されています。96年には「日本子どもの虐待防止研究会」という学術組織が立ち上がり,昨年の横浜大会では1500人を超える参加者を集めるまでになりました。医師や看護婦,保健婦,児童相談所,施設,司法,教育関係者など,援助に携わるべき方々の「子どもを救おう」という熱意で会場は埋め尽くされました。
しかし,取材をする人間から見えるものは,こうした専門職の方々の前向きな取り組みにもかかわらず存在する「子ども虐待への援助対応の地域間格差と個人差」です。
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