特集 保健婦の地区活動を再考する—地区とはなにか
[コミュニティの崩壊と再生]
保健所の子育て支援とコミュニティ形成—横浜市瀬谷区保健所の試みから
新堀 嘉代子
1
,
名和田 是彦
2
1横浜市衛生局
2東京都立大学法学部
pp.647-654
発行日 1999年8月10日
Published Date 1999/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902022
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はじめに
子育てを取り巻く社会環境は大きく変わり,「公園デビュー」「母子カプセル」などの新語からわかるように,母親同士や地域の人との人間関係の難しさや育児の孤立化など,母親の育児負担感や不安感が増大していると言われて久しい。しかし,この育児不安や負担感は自分の育児が終わると他人事になってしまい,結果として同じような不安や悩みは毎世代繰り返されている。
筆者(新堀)も業務で電話相談を受け,「こんなことまで相談するの? 誰か相談する人はいないのか」と思うことがたびたびある。近所で子育ての知恵を伝え合ったり,子供に声をかけ合うなど,多くの人の目や手を借りて子育てはできないのかと思う。
こうした状況にあっては,地域社会の力に着眼せざるを得ない。地域に子育ての問題を投げかけ,地域住民と問題を共有し,課題に取り組む必要がある。都市化でコミュニティが崩壊していると言われるが,また一方で現代の大都市ほどコミュニティの力が必要な時代と場所もないのである。
横浜市瀬谷区保健所では,地域の人々の関わり方や地域の仕組みがどうあったら,地域ぐるみで子育て支援ができるのかという視点で,住民も巻き込んで子育て支援のあり方について検討した。本稿は,この事業の昨年度1年間の経過を報告するものであり,事業に関わった新堀と名和田が共同で執筆したものである。
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