特集 移植医療と保健活動の接点を求めて
臓器移植医療における健康援助について考える
長谷川 浩
1
1東海大学健康科学部看護学科
pp.36-42
発行日 1999年1月10日
Published Date 1999/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901920
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要約
臓器移植に関する法律が成立し実施段階に入り1年余を経たが,肝心の脳死者からの臓器提供例はいまだ得られていない。それには多くの理由があるが,関係者の努力による意思表示カードの配布にもかかわらず,いまだ脳死と移植問題に関する正しい知識が普及していないこと,移植を求めている臓器不全患者の苦しみが一般に理解されていないことなどが指摘される。臓器提供の意思表示を行うことが健康問題への関心を高めることにもつながるので,患者理解の立場に立った中身の濃い社会的啓発活動が必要である。脳死移植のプロセスでは遺族への死別悲嘆援助が重要であり,保健婦にもその役割を期待したい。レシピエントはさまざまな社会的偏見と差別の壁に遭遇するので,身体的・心理的・社会的な包括的援助が必要であり,わが国にもクリニカルコーディネーターの整備が求められる。最後に,透析患者が移植を選択する際の心理的葛藤について考察し,正確で詳しい情報を提供すること,そして継続的援助が重要であることを改めて強調した。
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