メディカル・ハイライト
臓器移植
近藤 芳夫
1
1東大分院外科
pp.58-59
発行日 1968年4月10日
Published Date 1968/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204175
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心臓移植の臨床例以来,臓器移植ということが盛んに話題にされて,人体の改造だ,医学の革命だと騒がれている。従来の外科は,外傷,奇型を修復したり,疾病に侵された組織・臓器を切除したりすることが大部分の仕事であった。したがってその対象となる病変は修復・切除に耐え得る範囲に限られ,またその範囲のぎりぎりのところでは,機能欠落のために,いろいろな合併症を伴うことが問題となっていた。臓器移植は,この欠損部分を他の生体組織で補うことにより,切除の範囲をひろげ,また新しい臓器と取り替えることにより,外科の対象となり得る疾患を増そうとするものであって,人工臓器とともに,再建外科(reconstructive surgery),あるいは部品外科(spave part surgery)とも呼ばれている。皮膚,骨,角膜などの移植はすでに古くから行なわれてきているが,新しく臓器移植として問題にしているのは,腎・肝・心・肺など大型の生命不可欠臓器の移植であって,出入する血管をつなぎ,植えた臓器が十分な機能を発揮することが絶対条件である。
以前は慢性腎不全で尿毒症の末期にある患者は迫りくる死を待つより途がなかった。人工腎臓が進歩して透析を繰返すことにより,これらの患者を救う望みは出てきたが,人工腎臓で生きつづけるめには,その費用,労力は莫大であり,技術面,機能面の不備,精神的不安,施設の不足などが大きな問題として残されている。
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