特集 小児の移植医療
臓器移植
総論
臓器移植と移植免疫
藤野 真之
1,2
,
李 小康
2
FUJINO Masayuki
1,2
,
LI Xiao-Kang
2
1国立感染症研究所安全実験管理部
2国立成育医療研究センター研究所移植免疫研究室
pp.763-768
発行日 2023年5月1日
Published Date 2023/5/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000000902
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はじめに
臓器移植は,過去半世紀の間に大きく進歩し,さまざまな末期臓器疾患に対する最終的な治療法となった。しかし,移植後の生涯にわたる全身的な免疫抑制は,重度の感染症,悪性腫瘍,患者の心理社会的問題,医療制度への高いコストなど,大きな副作用を伴う1)。免疫抑制剤は急性細胞性拒絶反応を防ぐことができるが,ドナー特異的な抗体産生や後期慢性臓器拒絶反応を制御することができず,最終的に移植片不全につながる可能性がある2)。ドナー特異的寛容は,宿主の防御免疫を損なうことなくドナー臓器の受け入れをより助長するという点で,全身的な免疫抑制よりも優れていると考えられている。このような背景から,制御性免疫細胞を用いた治療法は,ドナー特異的な免疫寛容を永続的に確立し,臓器移植後の免疫抑制剤の必要性を最小化,あるいは排除するための新規かつ有望な戦略として検討されている。制御性T細胞(Treg)3),タイプ1制御性T細胞(Tr1)4),制御性マクロファージ5),制御性B細胞(Breg)6),骨髄由来抑制細胞(MDSC)7),制御性樹状細胞(DCreg)8),間葉系幹細胞(MSC)9)などの多くの種類の調節免疫細胞がすでに実験動物移植モデルで検討され,臨床試験に入り,安全性や移植片生存率の面で明らかな利益を示してきた。これらの細胞のなかで,DCregとMSCは臨床応用が期待される免疫制御細胞として,また,これら細胞が分泌するエクソソーム10)がとくに注目されている。
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